インフォームドコンセントガイドライン

インフォームドコンセントとは、患者さんが医師等から診療内容などについて十分な説明を受け理解した上で、患者さんご自身が同意され、最終的な治療方法を選択していただくということです。これを達成するため、当院では以下のようなガイドラインを定め診療を行います。

 

2020年4月1日
藤田医科大学 岡崎医療センター
インフォームドコンセント委員会

インフォームドコンセント(説明と同意)ガイドライン

1.目的(本ガイドライン作成の目的)

(1)  インフォームドコンセントとは、患者が医師等から診療内容などについて十分な説明を受け理解した上で、患者ご自身が同意され、最終的な治療方法を選択していただくということです。

(2)  インフォームドコンセントは「説明・理解」とそれを条件とした「合意」のいずれも欠けないことが重要です。医療の受け手(患者)と担い手(医療者)とが医療に関する情報を共有し、合意に基づいて治療法などを選択していく過程の中ではじめて実現します。
全ての医療行為で、その対象となるものは、医療行為の内容とそれによってもたらされる危険性・副作用、予測される結果、代替可能な医療行為の有無と内容、これらを実施しなかった場合に予測される結果等について説明し、患者の同意を得るべきです。
さらに、医師等の説明に基づき、患者がご自身の病状について十分に理解し治療に協力されること(パートナーシップ)は、相互の信頼関係に立脚した適切な医療の遂行と治療結果の達成のために重要です。
具体的には、患者側の意思が常に尊重されることと、患者と医療者双方が十分なコミュニケーションを保ちつつ治療が進められることによって達成されます。

(3)  インフォームドコンセントは、医療者との日々の誠実なコミュニケーションの積み重ねを通して成り立つものであり、あくまでも患者を主体とし、患者に観点が置かれている概念であることを理解する必要があります。
具体的には、患者に医療(検査・治療等)上の選択の機会を提示するものであり、あらかじめ医療行為の必要性(病名、病状)、内容、期間、危険性・副作用、予測される結果、代替可能な医療行為の有無と内容、これらを実施しなかった場合に予測される結果等についてご説明し、患者の決定権を保証するものです。
説明と同意は、口頭での説明と同時にその内容を文書で明示し、病院側および患者側の双方で確認・保管できるようにする必要があります。

(4) 本ガイドラインは、藤田大学岡崎医療センターにおけるインフォームドコンセントが適切に運用されるために作成されたものです。
 

2.対象(本ガイドラインの適用対象となる医療行為及び関係当事者)

(1) 本ガイドラインの適用対象となる医療行為
侵襲を伴い患者の生命や身体に影響を及ぼす医療行為。
ただし、下記医療行為は、本ガイドラインの適用対象外とするが、下記医療行為を実施する場合であっても、本ガイドライン「1.目的」に沿った運用がなされることが望まれる。
侵襲が軽微であって、患者から包括的な同意が得られていると考えることができる医療行為。
(2) 本ガイドラインの適用対象となる関係当事者
・医療従事者
・ 患者
・ 患者ご家族
・ (患者が意思を表明できない場合や未成年者である場合は)適切な代理人(例:法定代理人、家族代表者等)

 

3.手順(インフォームドコンセントの実施方法)

・ 原則として主治医または担当医が患者に対して行います(意思を表明できない場合や未成年者については適切な代理人に対して行います。)。
・ 患者が理解できる平易な表現や、理解を促す図・模型および説明同意文書等を用いると共に、説明内容の理解度について細心の注意を払います。
・本ガイドラインの適用対象である医療行為(詳細は2.(1)参照)のうち、患者の生命・身体に重篤な影響を及ぼす医療行為であると医師が判断した場合には、医師の説明に、他の医療従事者(できる限り他職種が望ましい)が立ち会うこととします。
・ やむを得ず他の医療従事者が立ち会うことができなかった場合には、後日、他の医療従事者は、患者(又はご家族)に対し、医師の説明内容の理解度を確認し、確認した旨を診療録に記載することとします。
・ セカンドオピニオンを受ける機会について説明をします。
・ 説明同意文書に説明医師、病院側同席者、患者・代理人、患者側同席者の署名を行います。
 

4.説明同意書の書式及び説明の範囲(内容)

(1) 書式
① 説明項目、同意を確認する記載、主治医(または説明医)及び患者(またはその代理人)の署名で構成された書式
② 詳細な説明内容を項目別に記載した書式
※ 口頭での説明と異なる内容があってはなりません。

(2) 説明の範囲(内容)
① 患者氏名、ID番号
② 説明を行った日付
③ 診断名(病名および病状)
④ 検査・治療の目的
⑤ 検査・治療の内容
⑥ 検査・治療の実施日、期間
⑦ 検査・治療に伴う副作用、危険性、合併症
⑧ 他の選択肢について
※ 予定する検査・治療以外に考えられる手段または代替可能な医療行為をその内容・効果・危険性および予後を含めて具体的かつ平易に説明します。また、医学的処置を行わない場合の予後についても説明します。
⑨ 患者の自己決定権について
※ 患者に最終的な自己決定権があること、および予定される検査・治療を拒否した場合にも不利益のないこと、セカンドオピニオンを得る機会があることを説明します。
⑩ 患者の理解度および同意の確認
⑪ 同意した日付
⑫ 患者本人の署名
※ 患者本人が署名します。本人が署名不可能な場合は次項(⑬)にて代用します。
⑬ 患者の代理人の署名および続柄の明示
(1) 患者本人の署名がある場合は不要です。未成年者、精神障害者、意
識不明者、その他、患者本人が判断および署名不能の場合は必須で
す。この場合、代理人と患者の続柄を明示していただきます。
(2) 未成年者、精神障害者、意識不明者、その他、患者本人に同意する能
力がない場合(判断および署名不能の場合)で、かつ、緊急で医療行
為を実施する必要があるにもかかわらず代理人の署名をもらうことが
できない場合には、説明同意書の「□患者本人に同意する能力がない
場合で、かつ、緊急で医療行為を実施する必要があるにもかかわらず
代理人の署名をもらうことができないが、本医療行為を実施すること
につき主治医が許可する」欄に☑を入れ、許可医師は所属診療科、氏
名を記入する。 
※適切な代理人の署名をもらうことができない場合とは、例えば、患者が意識不明の場合、身寄りがない場合、家族等の連絡先が不明の場合などが挙げられます。
⑭ 患者側の同席者の署名
※ 患者側同席者がいる場合、同席者本人が署名します。
⑮ 主治医または説明医師の署名
⑯ 病院側の同席者の署名
※ 病院側同席者がいる場合、同席者本人が署名します。

 

5.診療録(カルテ)への記載方法インフォームドコンセント(説明と同意)ガイドライン

患者(又はご家族)が、インフォームドコンセントを行うことができるように医療者側からの情報提供の内容を、電子カルテ上の「IC」タグを利用して診療録に記載するものとする。
なお、電子カルテのシステム変更等に伴い、「IC」タグ機能の変更・消滅等があった場合には、インフォームドコンセント委員会において、診療録(カルテ)への記載方法の代替手段を速やかに検討することとする。

 

6.記録の保管方法

説明同意書は原本を病院保管とし、原本のコピーを患者へ渡します。
(1) 入院患者の場合
・ 原本は病棟において「患者保管文書ファイル」に一時保管し、退院時スキャンセンターへ搬送します。
・ 原本はスキャンセンターにおいて電子カルテに取り込み、診療記録管理室へ搬送します。
・ 原本は最終的に診療記録管理室において患者毎のファイルに保管します。

(2) 外来患者の場合
・ 原本はスキャンセンターが各診療科より回収します。
・ 原本はスキャンセンターにおいて電子カルテに取り込み、診療記録管理室へ搬送します。
・ 原本は最終的に診療記録管理室において患者毎のファイルに保管します。

 

7.本ガイドラインの適切な運用の検証

① 本ガイドラインに沿ってインフォームドコンセントの取得がなされているかについて、診療記録管理室が、診療記録管理室内の手順書及び診療情報システム委員会で定められた方法に従って、本ガイドラインの適用対象となる医療行為に関する診療録を定期的に検証します。
② 診療記録管理室は、前記①検証結果をインフォームドコンセント委員会委員長に報告します。
③ インフォームドコンセント委員会委員長は、前記②結果報告を踏まえ、診療録等の記載内容が不十分な場合には、必要に応じて、本ガイドラインに沿ってインフォームドコンセントが実施されるよう各診療科に対し記載方法や内容の指導等を行います。

 

8.説明同意書(本項では、以下「IC文書」という。)の運用規定

(1)  各科のIC文書は、説明書、同意書、問診票(医療行為により)にて構成された文書とする。
   IC文書の作成に当たり、基本的には各科がその作成および内容に関し責務を負うこととする。

(2)  IC文書は基本的に電子カルテ内の各科“ワードエクセル文書”に設置し、患者説明においては、各部署で印刷しこれに拠って説明する。

(3)  説明書は、カルテ上においてある程度の改変や加筆を可能とし、これを印刷前に電子カルテに保存することで各患者に対する説明文書としての整合性を得る。
・ 他部署で作成し流用するIC文書(造影検査、内視鏡検査等)は原則改変禁止
・ カラー版等の印刷不能文書の運用:各部署でスキャンし電子カルテに格納
・ 汎用版IC文書:“各科共通”の“説明同意書”に置く(基本的には電子カルテに準備されていないIC文書に限り使用する。)。

(4)  同意書は各部署で“ワードエクセル文書”より印刷し、医師は「医師署名欄に直筆の署名または押印」、患者は「患者署名欄に署名」する。署名されたものを各部署でコピーし患者または家族にコピーを渡す。同意書原本はスキャンセンターへ移送し、電子カルテに保存する(但し、緊急にカルテ内に保存が必要な時は各部署にてスキャン。)。その後診療記録管理室へ搬送され、患者毎のファイルに保管する。
・ 外来検査予約時はスキャン保存の不備や遅延に備え、患者または家族に検査当日に持参するよう案内する。
・ 従来用いていたカーボン紙の同意書は廃止する。

(5)  問診票(原則はカルテ記載とし、必要なもののみに絞る:ヨード造影等)は各部署で印刷し、患者の署名を得た後スキャン保存(同意書に準ずる)。

 

9.説明同意書(本項では、以下「IC文書」という。)の作成手順

(1)  各科で必要と思われるIC文書をWord文書で作成し、改善提案書へ電子カルテ収載希望科(例:総合消化器外科)と収載タイトル(例:胃癌連携パス説明書・同意書)を明記し、総務部総務課へ提出する。
 同時に同様の内容を医療情報システム部インフォームドコンセント委員にe-mailで提出する。作成に当たってIC文書の雛形が必要な場合は、上記担当者にe-mailで請求する。
※ 医療情報システム部インフォームドコンセント委員のe-mailアドレスについては総務部総務課で確認する。

(2)  4科以上で用いるIC文書は各科共通フォルダに入れるものとし、前記(1)に従って「共通フォルダに入れたい」旨明記して文書を提出する(関連する部署名を記入)。インフォームドコンセント委員会で内容を承認後カルテ収載する。

(3)  関連する診療科が3つ以内の場合には各科フォルダに入れるものとし、各科で文章の追加やバージョンアップの必要がある時は各科の責任において改訂し、前記(1)の手順をもってカルテ収載する(委員会の監修を要しない。)。
 収載に当たってはヘッダに改訂年月日を明記し、それ以前のバージョンは無効とする。

(4)  医療情報システム部担当者は、カルテ収載完了を委員会にe-mailで報告する。
以 上